明治学院大学

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社会学部

社会福祉学科

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フィンランド福祉開発フィールドワーク(担当教員:岡 伸一)

世界で最も教育水準が高く、世界でも最も社会福祉の進んでいると言われるフィンランドを実際に訪問し、現場から学ぶフィールドワークは今回2度目になります。学生の皆さんが「楽しかった」「帰りたくない」「先生、ありがとう」と言ってくれると、企画した労が報われます。多くの学生が、欧州はおろか、海外旅行が初めてという状況で、見るもの、聞くもの、触るもの、すべてが新鮮で驚きの連続だったようです。とにかく26人の学生からたくさん質問を受けました。ヘルシンキに限らず、欧州の街並みは美しく、福祉以前に欧州社会そのものとその価値観を感じてもらうことがフィールドワークの重要な要素です。

今年は、11月6日(日)から13日(日)までの日程で、ヘルシンキと少し内陸に入ったタンペレとハーメリンナという地方を回りました。森と湖の美しい秋を満喫しました。まだ、雪はなくクリスマスの準備中でした。タンペレの町ではきれいなイルミネーションが町を飾っていましたが、ムーミンの町らしくムーミンやアニメの装飾も多かったです。

訪問した施設は、ヘルシンキでは子育て支援、学童保育施設, 精神障碍者のピアカウンセリング等を行うNPOの全国組織、タンペレでは障害時の統合教育を進めているバティアラ小学校、ヤルマリンコト高齢者居住施設、カンガスハラのシニヴィラ知的障碍者デイケアサービスセンター、ハメーリンナのサンポラ視覚・聴覚障碍者就労施設でした。

さらに、研修の合間に、ムーミン博物館、シベリウスの生誕の家、ハミ城、オリンピックスタジアム、テンペリアウオキ教会、魚市場、元老院広場、シベリウス公園、大聖堂等を見学した。特にお城は国内3番目の大きなもので、2時間かかっても半分くらいしか見れませんでした。また、日程的に厳しかったのですが、小雨の夕刻男子学生と私は世界遺産であるスオメンリンナ要塞をフェリーで訪ねました。やっと大砲にたどり着き帰った時は真っ暗でした。それぞれ紹介するととてもホームページには収まらないと思いますが、いくつか心に残ったことのみ紹介します。

フィンランドの教育・医療・福祉はすべて原則無料です。学校はすべて公立学校です。幼稚園からいじめ等暴力の排除は厳しく教えられます。育児休業中は80%の所得保障、自分で育児する際は手当が支給され、さらにご近所の子供も一緒に世話すると一人当たり定額の手当てが上乗せされる。保育施設に預けると保育費は無料、しかも待機児童はなし。

特別支援教育の先生は教員資格と特別支援教育の資格も必要で、賃金も一般教員より高い。学校は優秀な学生より学習が遅れていたり問題のある児童を優先的に手厚くケアする価値観が共有されている。

福祉施設で学生も私も一番感動したのは、ハメーリンナのサンポラ視覚・聴覚障碍者就労施設でした。ここは横に長い3階建て施設で、中央が食堂とリビング、管理部門で、左が居住施設、右が就労施設となっています。ここは視覚障碍者と聴覚障碍者が居住し就労する施設です。手話だけでなく、”sign language”と言っていましたが、時間をかけて一人一人と触れ合いながらコミュニケーションをとっています。全盲の人も耳のまったく聞こえない人もいますし、その他の複合的な障害を伴っている人もいます。

もともと障碍者家族が立ち上げたNPO法人なですが、視覚・聴覚障害の専門の施設はフィンランドでここ一か所ということです。職員と「クライアント」がとても仲良く楽しそうで、心温まる施設でした。障害の程度も違い、労働の質と量も人によって異なるなか、全体としてコーディネートすることはかなりの労力を要すると思います。アンチーク家具の修繕・補修、印刷・広告業務の委託、繊維製品の製造、家庭雑貨製造等、いろいろな就労が行われていました。日本のように障碍者を職場に適合するように訓練させるというより、障碍者に合わせて職場を設計している感じでした。見ていてとても素晴らしく感動しました。食堂のおばさんも障碍者で、楽しそうに働いていました。「クライアント」は障害年金を受けつつ、ここでの就労でいくらかの収入も得るのです。このNPO施設自体は、自治体の補助金が大きく、そのほかにカジノやスロットマシーン等の収益が配分されているとのことでした。

学生もみんな楽しんでいたようです。学校や福祉施設で日本の音楽を披露しようと、事前からグリークラブの野村君中心に準備していたのですが、なかなかうまくいきませんでした。ところが、清水君のギターの伴奏もあり実践で次第にうまくなっていき、最後にはなかなかすばらしい合唱となっていました。また、清水君は写真部でもあり、一眼レフでたくさん写真をとってくれて、すばらしいDVDにまとめてくれました。

幼稚園児からおじいちゃん、おばあちゃんまで職員や教員、フィンランドで会ったすべての人がとても親切で優しく、穏やかな人でした。教育や福祉関係施設はプラバシーの観点から写真が撮れず、紹介できないのが残念ですが、どの施設も明るく、オシャレで、綺麗でした。何もしなくても心が癒される感じでした。岡ゼミ生は全員福祉業界には進まない人たちですが、「こんな所なら働きたい」と言う学生も少なからずいました。

帰りの飛行機に乗る直前に、学生から“I love Helsinki !”の白いTシャツに26人の寄せ書きしてくれたプレゼントをいただきました。みんな、ありがとう。学生もいい意味でショックを受けたようです。フィンランドの教育と福祉、あれを目の当たりにしたら、多くの日本人は衝撃だと思います。きっと一生忘れられない美しい思い出になったはずです。キートス !!

ハミ城にて                ハメーンリンナの知的障害者施設
ハミ城にて ハメーンリンナの知的障害者施設

一般家庭での夕食                     タンペレの小学校
一般家庭での夕食 タンペレの小学校

タンペレの教会
タンペレの教会

 

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